ラチェットレンチ

●ラチェットレンチの仕組と特長

〔使いみち〕

・シノ付のラチェットレンチとは、可逆式ラチェットハンドルを備えたソケットレンチで、ラチェット本体の他端が、円錐状(シノ)になっています。これはボルト・ナットの取付けや取外しに使われたり、またシノ部は、鉄骨・橋梁工事などでリベットやボルト穴を合わせるのに使われ、鳶職の足場組みや番線締めに使われます。ラチェットレンチで、ボルト・ナットを取付けまたは取外す時に、反対方向へ回しますと、ラチェット機構によって空回りします。このレンチを使えば、ハンドルをグルグル回転させたり、工具を何度も差換えなくても、小さくハンドルを往復させるだけでよいので、狭い場所で使うには非常に便利な工具です。

・ラチェットレンチには、一定方向だけの回転をする片口ラチェットレンチと、左右両方に回転を切替えできる両口ラチェットレンチとがあり、両口ラチェットレンチは、2種類の異なった寸法のボルト・ナットに使えます。また両口ラチェットレンチは、回転の切替え機構により、ピン式と爪式とに分類されています。比較的締付け強度が必要なものにはピン式が、土木や建設等のゴミや土砂の付着があるものには、爪式が使われています。

・ボルト・ナットを回す工具には、昔からスパナ、モンキレンチ、めがねレンチ、ソケットレンチなど多くのものがありますが、これらの工具は、主に機械工業や自動車産業で使われています。これに対し、ラチェットレンチは鉄骨・鉄塔・橋梁・電気工事など、土木建設関連産業で多く使われる日本独特の工具なのです。

〔寸法種類〕

・ラチェットレンチの呼び寸法は、ソケットの12角穴の二面幅寸法で呼び、ソケットの形状によって図1の両口と図2の片口の2種類があり、それぞれ用途によって、ソケットの長いものと短いものがあります。

・片口ラチェットレンチは、12角穴が一つですから、その二面幅寸法が、呼び寸法となりますが、両口の場合は2つの12角穴を持っていますので、17x21というように、小さい二面幅寸法を先にして呼びます。呼び寸法は、図3でに示すように、12角穴の二面幅寸法で互いに平行する面の間の寸法ですから、一見してどれだけの寸法になっているかが非常にかわりにくいために、本体に呼び寸法が表示されています。片口ラチェットレンチは、10mmから46mmまで、 17種類あります。また両口ラチェットレンチは、ピン式のものが10mmx12mmから41mmx46mmまでの25種類、爪式のものが 10mmx12mmから46mmx50mmまでの30種類あります。

・現在では、標準の両口ラチェットレンチが最も多く使われていますが、まだ日本工業規格(JIS)などで標準化されていませんので、メーカーによって多少のちがいが出ています。ここでは、二面幅寸法(呼び寸法)の大小の組合わせと、強さ試験の荷重値の一例を表1に示しておきます。

〔使われている材料〕

・土木建築工事現場の高所作業や、足場の悪い過酷な作業条件で使われることが多いので、ハンドル、ソケット、爪の重要部品は、安全性を考えて、クロムモリブデン鋼やクモムバナジューム鋼などの合金鋼が使われ、ハンドルの曲がりや折れ、ソケットの割れや爪の欠けがない、安定したラチェット機構が得られるよう最適な熱処理が施されています。

・ハンドル、ソケット、爪の硬さはそれぞれちがいますが、ロックウェルCスケールですべて40以上になっています。

(参 考)

・クイックレンチは、パイプやホース等の各種配管関係に使われている、ボルト・ナット類の取付け・取外しに使う工具です。使いやすくて小形・軽量のラチェットレンチの一種です。これは、ボルトやナットの上部からだけではなく、横方向からも取付けて回せるもので、10mmから36mmまで、19種類あります。

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(表-1)
呼び寸法 L
(mm)
D
(mm)
T
(mm)
モーメント(kgfm)
小側 大側
10 x 12 225 30 36 6 10
10 x 13 12
11 x 13 8
10 x 14 6 16
12 x 14 10
13 x 17 270 36 45 12
14 x 17 16
13 x 12 310 43 50 12 32
17 x 19 26
17 x 21 39
19 x 21 32
17 x 22 355 51 55 26 43
19 x 22 32
19 x 24 48
22 x 24 43
21 x 26 39 59
23 x 26 46
21 x 27 39 60
22 x 27 43
24 x 27 48
24 x 30 400 60 65 68
27 x 30 60
26 x 32 59 73
27 x 32 60
32 x 35 445 65 70 73 81
32 x 36 83
35 x 41 490 75 75 81 92
36 x 41 83
41 x 46 82 92 96


●ラチェットレンチの使い方

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〔使い方の注意〕

・ラチェットレンチの使い方は、相手の六角ボルト・ナットの二面幅寸法に合った呼び寸法のものを使うのが原則です。スパナはボルト・ナットの横から差込んで使えますが、ラチェットレンチは上側から、はめこむしか方法がありません。そのかわり全周を囲んでいますので、外れる危険性はまずなく、安全です。ボルト・ナットを締付け、またはゆるめる時、ハンドルを回して力を加える方向に爪を切換え、ラチェット車と爪が確実にかんでいるかどうかを確かめてから使うようにしませんと、もし力一杯ハンドルを回し、空回りでもしたら非常に危険です。爪の切換えは、図6のように確実に行って下さい。

・ラチェットレンチは、狭い場所でも、ハンドルを15度以上往復させることができれば、ボルト・ナットを締付けたり取外したりすることができますが、狭い場所で図7のように、爪が構造物も当たり、爪に無理な力が加わったりしますと、爪がラチェット車にかみ込んで、ソケットが回らなくなることがありますので、注意する必要があります。

・図8 のように、ハンマーがわりに使ったり、図10のように、シノ部の細いところで穴合わせをしたり、穴合わせのためラチェットレンチを横にハンマーで叩いたり、図12のようにシノをタガネがわりに使ったり、シノ部にパイプを差込んでソケットに大きな力を加えたり(図13)しないよう取扱いについては十分注意する必要があります。

・土木・建築会社では、工事現場の重要な安全対策の一つとして、工具落下事故防止対策に努められている企業が多く、工具メーカーとしても、その対策に迫られています。特にラチェットレンチは、高所作業でしかも足場の悪い所で使われることが多いので、安全ひもを工具に通したり、メジャー式の安全ロープを通して使えるように、ハンドルに穴を開けたり、ソケット・シノの両方の作業に便利なように、スライドリングが付いたものが市販されております。
(図4)